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新型コロナから考えること
パンデミック化を後押しするのは、高速の移動ネットワークの存在と高い人口密度。
どちらも昔は珍しい条件だったが、今では地球上どこにでも存在し、当たり前の事となっています。
いつの時代にも新たに登場する感染症の最大の特徴は、「不確実」であること。
「どれだけ広がるかは専門家にも分からない」
感染力や致死率は、地域の人口構成や感染症への対応策、感染者が受けられる医療の質などによって、いくらでも変わります。
歴史を振り返っても、マラリアが非ヒト霊長類からヒトに感染するまでには、数千年の年月が過ぎていたと解明されたり、過去50年に限定しても、300以上の病原体が新たに出現している状況です。新たなウィルスとは、不確実で解明まで時間がかかります。それに加えて、現在は、気候変動や砂漠化、動物とヒトとの交流の増加、不十分な医療制度といった要因が、感染拡大に拍車を掛けている状況です。
日本では既にウィルスはどこに行ってもある確率が高く、「手洗い」、「うがい」、「消毒」、「体調管理」をしっかりすることしか、対処はないかもしれません。
総合大雄会病院の後藤礼司医師は、一番重要なことは「手洗い」「うがい」、それに加えて「消毒」するのが良いと話しておりました。加湿器や空気清浄機も効果があるとの事ですが、フィルターを綺麗に保つことが重要とのことです。
あくまでも一番重要なのは、「手洗い」「うがい」と言っています。
そんな中、心打たれる文章が、世界で話題になっています。
現代の人々の行動について考えさせられる、心打たれる手紙
ミラノのアレッサンドロ・ヴォルタ高校のドメニコ・スクイラーチェ校長が、生徒たちへのメッセージを同行のネット掲示板に掲載。
17世紀のミラノを襲ったペスト感染の状況を語る
マンゾーニの名著「”許嫁 (I PromessiSposi)”」の引用から始まる文章です。
~ヴォルタ高校の皆さんへ~
“ドイツのアラマン族がミラノに持ち込む可能性があると健康省が恐れていたペスト。それは、実際に持ち込まれ、イタリア中に蔓延し、人々を死に至らしめた…”
これは、1630年にミラノを襲ったペストの流行について書かれた”許嫁”の有名な第31章です。
見事な先見性と良質な文章。
ここ数日の混乱の中に置かれた君たちに、よく読んでみることをお勧めします。ここに全てが書かれています。
外国人を危険と見なし、当局間は激しい衝突。
最初の感染者をヒステリックなまでに捜索し、専門家を軽視し、感染させた疑いのある者を狩り、デマに翻弄され、愚かな治療を試し、必需品を買い漁り、そして医療危機。
君たちもよく知っている通りの名前がいくつも登場するこの章は、マンゾーニの小説というより、まるで、今日の新聞を読んでいるかのようです。
親愛なる生徒たち。規則的な学校生活は市民の秩序を学ぶためにも必要です。
休校に至るには、当局もそれ相応の決断をしたのでしょう。
専門家でもない私は、その判断の正当性を評価することも、また評価できると過信もしません。
当局の判断を信頼し、尊重し、その指示を注意深く観察して、そして君たちには次のことを伝えたいと思います。
冷静さを保ち、集団パニックに巻き込まれないでください。
基本的な対策(手洗いうがいなど)を怠らず日常生活を続けてください。
この機会を利用して散歩をしたり、良質な本を読んでください。
体調に不備がなければ家にこもっている理由はありませんが、スーパーや薬局に殺到しマスクを探しに行く理由もありません。
マスクは病気の人に必要なものです。
感染の広がりが速いのは、発展した文明の結果です。
それを止める壁がないことは、数世紀前も同様で、ただその速度が遅かっただけです。
このような危機における最大のリスクについては、マンゾーニ、そしてボッカッチョが、私たちに教えてくれています。
それは、人間が作る社会が毒され、市民生活が荒れること。
目に見えない敵に脅かされた時、人間の本能は、あたかもそこらじゅうに敵がいるかのように感じさせ、私たちと同じ人々までもを脅威とみなしてしまう危険があります。
14世紀と17世紀のペスト流行時とは異なり、現代の私たちには確実で進歩し続ける医学があります。
社会と人間性、私たちの最も貴重な資産であるこれらを守るために、文明的で合理的な思考をしましょう。
もしそれができなければ、”コロナ”が勝利してしまうかもしれません。
欧州に衝撃を与えたペスト
通常であれば、感染症の発生は、検疫や隔離、予防接種といった対策によって抑えられているのが普通であるが、これら対応は単一の病原体に的を絞ったものだ。この方法が取られた最初の例はペストだろう。ペストは、クマネズミに寄生したノミから主に感染する細菌性疾患。感染率が高く、発症すると苦痛や手足の壊死などをもたらし、患者は通常3日以内に死亡する。致死率は約7割で、死者が増え過ぎて埋葬する人手が足りなくなることもあったと言われている。1347年に発生して17世紀まで続いた第2次パンデミックでは、当時の世界人口の4分の1に当たる約1億人が死亡した。このときのパニックの広がりを受けて、その後数世紀にわたる公衆衛生上の施策の原型が生まれたと言われている。水際対策や軍隊による検疫、さらには都市や国全体を隔離する「防疫線」が導入された。保健当局は疑われる症例を戸別訪問で割り出し、感染者用の施設に強制収容。安全な対人距離を保つために、メートルの棒を持ち歩く「社会距離戦略」が当時推奨されたりしていたと言う。
歴史を振り返っても、文明、医療、衛生管理は時代と共に大きく進歩しているが、差別やパニックによる偏見、行動という「人間の心理」はあまり変わっていないにも思われます。
こうゆう時こそ、歴史を振り返って、自身の行動を見つめなおし、過去から学ぶことも必要ではないでしょうか。これを機に、一度、歴史や過去を見つめ直し、じっくり考えてみたいですね。
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